映画を観るために留学に来たのだっけと頭を抱えかけている(2013年9月映画録)

映画を観るために留学に来たのだっけと頭を抱えかけている(2013年9月映画録)ilo-ilo-angeli-bayani-koh-jia-ler僕のフランスでの生活がスタートを切った9月に観た映画についてさらりと触れておきます。暇だったのか何だったのか判らないけれど、いやたぶん暇だったんですが、数えたら23本。日本にいたときよりは確実に観てますね。やっぱり暇だったのだろうな。僕は留学に来ているはずなのだけれどおかしいな。

ちなみにAixにはCezanne, Renoir, Mazarinとフランスで著名な画家から取った名前の3つの映画館があり、1つはハリウッドを中心とした娯楽映画が、もう2つは映画祭などに出品されていた昨今のアートフィルムを中心に上映されております。すべて僕の寮から徒歩10分以内に位置しているので、ふらーっといけます。しかもフランスにしては珍しく休日がない。今月観た映画もほとんどが映画館だったので、日本で同じ数観ていたらなかなか財布が淋しいことになっているものの、こちらだと私営の映画館だと20ユーロ払って年間会員になると1本5.9ユーロで観れます。定かかどうか不明なもののエックスはパリに次いでフランスで二番目に物価が高い街と巷では言われているようで、ほかの街では映画ももうすこし安いらしい。いいな。というわけで一覧。

    • ロマン・ポランスキー『水の中のナイフ』(1962)
    • ロマン・ポランスキー『反撥』(1965)
    • ロマン・ポランスキー『吸血鬼』(1967)
    • ロマン・ポランスキー『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)
    • ロマン・ポランスキー『チャイナタウン』(1974)
    • ロマン・ポランスキー『テナント/恐怖を借りた男』(1976)
    • ロマン・ポランスキー『テス』(1978)
    • ロマン・ポランスキー『フランティック』(1988)
    • ロマン・ポランスキー『戦場のピアニスト』(2002)
    • ロマン・ポランスキー『ゴーストライター』(2010)

 

    • アンソニー・チェン『ILO ILO』(シンガポール, 2013)*カンヌ映画祭, カメラドール受賞
    • アレハンドロ・ホドロフスキー『リアリティのダンス』(チリ, 2013)*カンヌ映画祭
    • セバスチャン・シルヴァ『MAGIC MAGIC』(アメリカ・チリ, 2013)*カンヌ映画祭
    • スティーブン・ソダーバーグ『恋するリベラーチェ』(アメリカ, 2013)*カンヌ映画祭
    • レベッカ・ズロトヴスキ『GRAND CENTRAL』(フランス, 2013)*カンヌ映画祭
    • アルノー・デプレシャン『JIMMY P.』(アメリカ・フランス, 2013)*カンヌ映画祭
    • 『キック・アス2』(アメリカ, 2013)
    • エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ『最強のふたり』(フランス, )
    • コンチャロフスキ『暴走機関車』(アメリカ, )
    • ウディ・アレン『マッチポイント』()
    • ビル・ダグラス『My Childhood』『My Ain Folk』『My Way Home』(アメリカ, 1972,1973,1978)

しかし、この間の記事でも触れましたが、ポランスキー特集やっていたというだけあってとりわけ後半はポランスキーばかり観ていた。外れがないのでたのしい。それから今年のカンヌ映画祭で上映されたフィルムもさすが本国というべきかかなり観れるので、それもいくつか観たりした。何となくそれぞれ簡単にコメント寄せたい。しかし、僕のフランス語能力的にやはりフランス語の映画を観るというのは依然としてけっこう厳しい。内容に依るもののフランス語字幕だったらまだ案外行けたりするんですが、オーラルとなるとやはり哀しいかな…。

カンヌ関係の映画より。上のリストは僕がよかった順なのですが、アンソニー・チェン『ILO ILO』は本当に良かった。ストーリーラインは父母が共働きで気難しい息子を手に負えなくなった中国系シンガポール人の家庭が、フィリピン人の家政婦を雇うことに決め、その息子と家政婦との間に存在した溝が時間が経つにつれ徐々に埋まってゆく、という一見ベタな話。なんだけど、おそらくシンガポールが直面しているであろう人種ヒエラルキーであったり、移民であったり、経済であったりといった社会問題をも包含している前半は、美しい映像に包まれた緊張感が素晴らしい。後半に入ってベタな展開が繰り広げられ始めたときは一瞬失望しかけたものの、結末にかけてそのベタさが赦せてしまうくらいにすべてが緻密につくられていることがわかり、案の定の展開のラストは巧い演出に涙させられそうになる。処女作とは思えない。カメラドール、納得。日本では配給は不明ですが今年のフィルメックスで上映されるらしい。しかしこのフィルメックスのダサいサイト何とかならないのかな。

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そして2014年に海をわたり日本でも上映が決定している、チリの奇才ホドロフスキーの23年振りの新作『リアリティのダンス』。イタリア人の友人と観に行ったのだけれど、ふたりして興奮。話そうとしても稚拙なフランス語では言語化できないまま消化不良に。ただし日本語でもきちんと消化できる自信がない。ストーリーとしてはホドロフスキーの自伝の映像化ということらしいけれど、中途半端なセンスを持った人間にはできないような、「ああなるほど、才能ってこういうことを言うのだろうか」ということが判るというか。とにかくこれは観に行ってもらわないと判らないし、ぜひとも観に行ってほしいと掛け値無しにある意味勧めたくなる映画です。それからぜひとも話しましょう。

『MAGIC MAGIC』もよかったなあ。セヴァスチャン•シルヴァなんて監督きいたことがなかったのだけれど。アメリカ人の女子大生の主人公が友人たちとチリへとバカンスに行ったものの、さまざまな出来事が積み重なって精神的に追いつめられ、彼女自身を見失っていく…という話。手を叩いて最高だ!と声高に叫ぶまでいかずとも、見事な演出に息を呑まされ、張りつめた空気のもとうまくドキドキさせられる。アメリカの映画情報サイトIMDbを観ても、口コミで★0をつけている人と★10をつけている人、まっぷたつに割れているという。僕はかなり好評価、というかホドロフスキーとは違った意味で「映画ってこういうのもアリなのよねえ」と深く頷かされるような映画でした。

そんでスティーブン・ソダーバーグ『恋するリベラーチェ』。アメリカでかつて一世を風靡したピアニストリベラーチェ、そのかつての愛人スコットが書いた手記を基にした映画。それぞれマイケル•ダグラスとマット•デイモンが演じ、目をつい逸らしてしまうゲイシーンもあるというわりとそちらの方面で需要があるのではないかという映画。淡白ではあるのだけれど、それでも2時間飽きずに観れたのは大きい。

『GRAND CENTRAL』、こちらにきて最初に見た映画。客もかなり入っててビックリ、わりとロングランしてた。フランスの原発で働き始めた男が、その地でこれまで求めていた仲間、金、愛といったことをすべて手にいれるが放射能に蝕まれ…という話。フランス語オーラル能力が低いせいも十二分に有ると思うんだけど、浅薄な印象であまり面白いとも思えず。ただ、こういうストレートな原発にまつわる物語(フィクション)映画が、なぜ日本であまりつくられていないのだろう…というのは思った。原発を取り上げたドキュメンタリー、原発の影響が垣間見える映画は多々あることはあるとおもうけれど、ここまで真正面から原発をテーマにしたフィクション映画は1、2本くらいしか存じ上げない。僕が知らないだけであることはあるのかしらん。どなたかご存知でしたら教えてください。というか、たぶん僕は一般的な同年代の人間よりもほんの少しだけ映画にアンテナを張っているクラスタに属すると思うのだけど、逆に言うと”僕でさえ”知らないという状況はマズイ、と常々思う。本当にだれもが知っていて観ているような、そんな力のある映画がつくられてほしいと思うのと同時に、それが起きないということそれ自体が僕らが生きているこの時代を象徴しているよなあと沁沁したところで、全部にコメントするのが面倒くさくなったので終わります。オやすみ。


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