Articles Written By: イモリ

吉田美奈子 THE TRIO(2016年夏, 新宿PIT INNにて)

吉田美奈子 THE TRIO(2016年夏, 新宿PIT INNにて)

新宿ピットインに吉田美奈子 THE TRIOを友人と聴きにいった。2 DAYS 公演の1日め。この日がはじめて吉田美奈子を生で聴く機会になった ―― 彼女の書いた曲のうちでいくつか好きなものはあるが、もともと熱心なリスナーではなかったので、今回たまたま友人に誘われることがなければ、このまま彼女のコンサートを観にいくことはなかったかもしれない。去年の末に新宿文化センターで開催されたピットイン50周年フェスティバル、2日めに出ていた渋谷毅オーケストラ with 吉田美奈子 をはじめとするラインナップに惹かれながらも、さんざん逡巡したあげく、1日めのほうを観にいっていたし(幻の山下洋輔トリオの再結成…

Chat noir et blanc volé d’une fenêtre de l’immeuble.

Chat noir et blanc volé d’une fenêtre de l’immeuble.

窓はパリの空にひらかれていた。夏の終わりを控えめに告げる九月の風が、開け放たれた窓から七階のアパルトマンの一室へと吹き込んでいる。白黒の毛に覆われた猫は、その窓にゆっくりと吸い込まれてゆくようにして、おそるおそる窓が切り取っている風景に近づいてゆく。その小さな躯体が風を受けたとき、猫は意を決して、空への大きな飛翔を試みる―――ほんの数秒後、はるか下方の石畳に無残にうち叩かれているとはいざ知らず。   ♢   わたしはその週末、パリの知人のアパルトマンにいた。休日のあいだ、家主である知人は、ガールフレンドとともに旅行に出かけていたのだが、彼の好意にあやかって、わたしは彼らの不…

「ニキ・ド・サンファル展」―― わたしたちの中に眠る〈連続性〉を祝祭するべく踊る女たち

「ニキ・ド・サンファル展」―― わたしたちの中に眠る〈連続性〉を祝祭するべく踊る女たち

ニキ・ド・サンファル展に行った。友人が熱烈にお勧めしていたので、会期ギリギリに新国立美術館に滑り込む。会期中最後の日曜日なのもあってか、けっこうな混雑を見せている。老若男女問わず、というかむしろ若いひとたちが比較的多かったのが印象的だった。教養が足りないので、ニキ・ド・サンファルというアーティストの存在について、僕はこの展覧会について知る以前は認識していなかったのだが(のちほど会場で「20世紀においてアンディ・ウォーホルと比肩するくらい有名な芸術家」という文章を見て、自分の浅学を恥じたのはいうまでもない)、なぜかふと六本木駅から向かっている途中に、パリのポンピドゥー・センターの近くの広場(スト…

非匿名的な死を前にして立ち竦むわずかばかりの時間について

非匿名的な死を前にして立ち竦むわずかばかりの時間について

彼女とはとりたてて親しい間柄というわけではまったくなかった。彼女の存在が僕の生にたいして、何らかの特別な意味を与えてきたことは、これまで一度もなかったように思う。だが皮肉なことに、突如として訪れ、思わぬかたちで僕のもとに通達された彼女の〈死〉が―――ほかの十三の死でもなく、あるいは匿名的な死でもなく―――僕に向かって、何かを呈示せんと主張しているように思えてならないのだ。僕は彼女を知っていた。彼女も僕を知っていた。たったその程度の脆弱な関係性が欠けてしまっただけなのに、彼女の死を前にして、僕は戦慄させられ、動揺させられてしまっている。 それはおそらく彼女の死がある象徴的な語られ方をしているから…

「英国の夢 ラファエル前派展」――饒舌な物語、リアルのなかのロマンス

「英国の夢 ラファエル前派展」――饒舌な物語、リアルのなかのロマンス

「リバプール国立美術館所蔵――英国の夢 ラファエル前派展」にいってきました。Bunkamura ザ・ミュージアムにて。映画や演劇を観にBunkamuraに足を踏み入れるたびに思うのだけれど、この場所にいるひとたちは、渋谷の路上でのたまう烏合の衆の大半とは、明らかに異なる階層に属している。Bunkamuraに集う上品な身なりをした妙齢の紳士淑女が、すぐ隣にあるドン・キホーテのスウェットとクロックススタイルのヤンキーと同種の生きものである、という紛れもない事実に、どこか反発を覚えている自分がいることを告白しなければらならない。   さておき、「ラファエル前派展」。ラファエル前派の作品をま…

雑記( October, 2015 )

雑記( October, 2015 )

十月。 いよいよTシャツで過ごすのが困難になり、冬物のコートをどうしようかと考える時季になった。十月も終わりに差し掛かると冬の到来をひしひしと感じる。風呂場から出たときの寒いこと寒いこと。そして、ベランダに設置された椅子に腰掛け、煙草をふかしながら読書をするという僕にとっての最高の時間が、気温の低下にともなって失われつつあることに危惧している。じつは日本で冬を迎えるのは三年ぶりになるので(しかも過去の二年は南仏とアフリカにいたので、寒さ耐性をほぼ失っている)、どうなることやらといまから心配だ。なにごともなく生き延びれるといいけれど。はやくコートを買おう。   十月から友人たちがのさば…

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