豊かさを手にした旅の末に
  • 2014/03/31

豊かさを手にした旅の末に

なぜかその日曜日はとても朝早くに目覚めた。特に予定もなかったけれど衣服を着替え、カメラを掴んで家を出る。ぼんやりとしながら駅へと足を運び、まだひともまばらな上りの電車に乗り込んで、都心へと向かった。当てもなく水道橋あたりで下車し、あれこれと思索に耽りながらやわらかな日差しのなかを歩いていると、スポーツ紙を広げているマスターのほかには誰もいない寂れたカフェに行き着いた。陽が届く窓際の席に腰掛けて、読みかけの文庫本を片手に、熱いコーヒーを体のなかへと流し込む。 なんて豊かなんだろう、と思った。その瞬間が、愛しくてたまらなかった。そして同時に、かつてこれに似た豊かさを感じたことを思い出す。 — 17…

トルコで僕は羊飼いになった – 中篇 – (トルコ旅2012その5)

トルコで僕は羊飼いになった – 中篇 – (トルコ旅2012その5)

なにかに導かれるように偶然(『トルコで僕は羊飼いになった – 前篇 -(トルコ旅2012その4)』)が重なって辿り着いたのは、ゲルだった。予想以上にゲルだった。これ教科書とかで見たことあるやつだ。カイセリから南に100キロに位置する田舎町、Yahyaliからまたさらになにもない丘の間を走る道路にバイクで数十分走らせ辿り着いた小さな集落。写真に映っているのがほぼ全域で、もちろん、地名なんてものはないし、移動式住居のゲルよろしくそのときどきで住む場所を変えているのかもしれない。何てったって土地ならば四方に山ほどある。住所不定羊飼い。そこでは5つくらいの家族があって、老若男女20人程度暮らしているよ…

トルコで僕は羊飼いになった – 前篇 -(トルコ旅2012その4)

トルコで僕は羊飼いになった – 前篇 -(トルコ旅2012その4)

話はすこし遡る。僕は何の計画もないまま先輩に呼び出されてカッパドキアにきて、これから残りの旅をどうしようかと思案していた。何となくインターネットでトルコについて調べていて、いまとなってはどこのサイトかも憶えていないのだけれど、偶然大自然のなかでたくさんの羊が写っている写真を目にする。その1枚の写真で僕はふと、いつからか抱いていた憧れを思い出した。「アルケミスト」をかつて読んだためか、あるいはモンゴルの放牧とゲルの生活を知って本当のノマドワークというものがやりたかったのか、もとの興味を持った理由はわからない。けれど、『羊飼い』という職を一度は経験してみたいと心のどこかで思っていた。そんなどこかに…

絶景のなかで意気揚々とバイクを走らして(トルコ旅2012その3)

絶景のなかで意気揚々とバイクを走らして(トルコ旅2012その3)

パスポートが見つかり、意気揚々と懲りずにバイクを借りた僕は、時速100キロでトルコの大地を疾走する。風を全身に受ける。眼前にはカッパドキアの果てしない光景が広がる。気分は高揚する。 ギョレメから北に約10km、あっという間にアヴァノスという隣町へ辿り着く、丘らしきものがあったので上へ上へと登りつめて、後ろを振り返る。 カラカラと晴れた空の下にカッパドキアの大地が広がっている、思わず両手を空に突き上げて背伸びをしたくなるような、そんな素晴らしい日。まさしく意気揚々と形容するのにふさわしい面持ちで僕は景色に対峙する。

トルコの大地に降り立った(トルコ旅2012その1)

トルコの大地に降り立った(トルコ旅2012その1)

飛行機から降りると途端に、厭味のない太陽が照りつけ、からからとした心地のよい風があたりを吹き抜ける。頭上では三日月と星が刻まれている赤い国旗が踊っている。どうやら、トルコ・イスタンブールの地に僕は遂にやってきたらしい。 (そこへ辿り着く前、例によって日本出国前にバタバタしたりだとか、上海でバタバタしたりだとか、モスクワの空港でロシア人の美女(7割少女)たちに目を奪われていていまのうちから許嫁にして手塩にかけて育てたい()とか、いろいろあったのだけれど、ここでは残念ながらそれらは省略して、ここからはじまる1ヶ月にわたるトルコの旅の記録をお届けします。)

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