雑感

高円寺ガード下ではもう鳴ることはない音楽

高円寺ガード下ではもう鳴ることはない音楽

訃報を知ったのは、1週間ほど前だった。彼は音楽家だった。2年半くらい前に初めて会ってから、たぶん数えるほどしか会ったことがない。だからあとのことは、正直あまりよく知らない。ただ音楽家であることだけはよく知っている。そんなひとの訃報を前に、筆を取ること自体が相応しいのかわからない。何かを言う権利があるのかわからない。向き合いかたがわからない。1週間前の日記の文章はぐちゃぐちゃで目も当てられない。 一度、高円寺のガード下で共演したことがある。いったいいつから、これまで幾度そうして彼は路上で音楽を鳴らしたのか僕は知らない。彼は不器用な生活をしていて、そうして時おり銭を稼いで日々生きていたことだけ、何…

豊かさを手にした旅の末に
  • 2014/03/31

豊かさを手にした旅の末に

なぜかその日曜日はとても朝早くに目覚めた。特に予定もなかったけれど衣服を着替え、カメラを掴んで家を出る。ぼんやりとしながら駅へと足を運び、まだひともまばらな上りの電車に乗り込んで、都心へと向かった。当てもなく水道橋あたりで下車し、あれこれと思索に耽りながらやわらかな日差しのなかを歩いていると、スポーツ紙を広げているマスターのほかには誰もいない寂れたカフェに行き着いた。陽が届く窓際の席に腰掛けて、読みかけの文庫本を片手に、熱いコーヒーを体のなかへと流し込む。 なんて豊かなんだろう、と思った。その瞬間が、愛しくてたまらなかった。そして同時に、かつてこれに似た豊かさを感じたことを思い出す。 — 17…

家入一真氏、都知事選立候補、「ぼくらの政策」、なんのための選挙?

東京では、家入一真氏が都知事選に立候補し話題を集めているようです。 ざらーっとまとめなどを参照した限り、いつものように半分ノリで立候補を仄めかしたらば、意外とうまい具合に転んでいったので出馬を決めたという流れのようですが、彼のツイッターアカウントを始めとして、家入一真都知事選立候補者特設サイトなんてものもできていて、少なくともツイッターを中心とするインターネット界隈では盛り上がっている様子が伝わってきます。 選挙というと想田和弘の観察映画『選挙』で描かれていたような(昨年話題を集めていた『選挙2』『立候補』なんかは観れてない…)、選挙カーで空虚な笑顔を振りまきつつグルグルしたり、寒いなかうだ…

目覚めながらにして産み出された夢たちを僕らは見続けている

目覚めながらにして産み出された夢たちを僕らは見続けている

ひとは夢をみることができてよかった、と、改めて思う。 僕はいつもはあまり夢をみない(というのは適切ではないのかしらね。だれしもが必ず夢をみているらしいですし。正確にいうならば、なんの夢をみていたか起きたころには憶えていない)。しかしながら、フランスへと移住してから来てから、なぜかよく夢をみるようになった。とりわけ最初のころは「僕のフランス滞在中に何らかの事態が発生し緊急帰国をするが、自宅で母の手料理を食べてすぐにまたフランスへと戻る」というわかりやすすぎる夢をよくみていた。 多くの小さな哲学者たちは「夢とは何なのか」とこれまで問うてきたとおもう。それは僕にとってはどうでもよくて(よくなって)、…

参議院選挙と『災害ユートピア』の終焉

思えばこの数年は活気があった。311のあと政治は変わる、日本は変わると思えたし、若手論客も続々登場しメディアに出てくるようになった。でももうそういう「祭り」全体が終わった感じがする。日本は変わらない。第三極も生まれない。ほんと、残念だね。ここまで見事に自民党政治が復活するとは。 — 東浩紀 (@hazuma) July 21, 2013 参院選が終わった。 投開票日の翌日に20歳を迎えた僕もどうやら有権者だったらしく(4月1日が早生まれなのと同じ論理らしい)、すなわち今回の参院選がはじめて目に見える形での政治参加だった。年金についての案内の手紙と同様に家まで届いた「選挙のお知らせ」…

僕がクソつまらない「写真」に惹かれている理由

写真というのはつまらないものだと僕はよく思う、とてもつまらない表現分野だ、と。 アートとして一部では認識されているのにも関わらず、表現方法としては相対的に見て他の分野よりも見劣りしてしまう。 映画とはちがって、写真はいつも平面的で、時間性というものが存在しない。映画の中では役者に言葉をぺらぺらと喋らせたり、ストーリーの文脈に沿って観客になにかを直截的に伝えることはたやすい。映像に音楽や効果音をつけたり、あるいはカット割りのテンポで観客を飽きさせない工夫をすることもできる。しかしながら、すくなくともいまは写真は音すら持っていない、あるのは連続性のなかから切り取った、たったひとつの光景だけだ。 絵…

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