高円寺ガード下ではもう鳴ることはない音楽
訃報を知ったのは、1週間ほど前だった。彼は音楽家だった。2年半くらい前に初めて会ってから、たぶん数えるほどしか会ったことがない。だからあとのことは、正直あまりよく知らない。ただ音楽家であることだけはよく知っている。そんなひとの訃報を前に、筆を取ること自体が相応しいのかわからない。何かを言う権利があるのかわからない。向き合いかたがわからない。1週間前の日記の文章はぐちゃぐちゃで目も当てられない。 一度、高円寺のガード下で共演したことがある。いったいいつから、これまで幾度そうして彼は路上で音楽を鳴らしたのか僕は知らない。彼は不器用な生活をしていて、そうして時おり銭を稼いで日々生きていたことだけ、何…