雑記( October, 2015 )

雑記( October, 2015 )

十月。 いよいよTシャツで過ごすのが困難になり、冬物のコートをどうしようかと考える時季になった。十月も終わりに差し掛かると冬の到来をひしひしと感じる。風呂場から出たときの寒いこと寒いこと。そして、ベランダに設置された椅子に腰掛け、煙草をふかしながら読書をするという僕にとっての最高の時間が、気温の低下にともなって失われつつあることに危惧している。じつは日本で冬を迎えるのは三年ぶりになるので(しかも過去の二年は南仏とアフリカにいたので、寒さ耐性をほぼ失っている)、どうなることやらといまから心配だ。なにごともなく生き延びれるといいけれど。はやくコートを買おう。   十月から友人たちがのさば…

『マイ・インターン』――交差する男性性/女性性

『マイ・インターン』――交差する男性性/女性性

『マイ・インターン』を観た。いまも熱狂的な人気を誇っている『プラダを着た悪魔』の実質的な続編といわれているためか、映画館の客の入りはものすごかった。レディース・デーだったからかもしれないが、女性客かカップルばかり。あの環境のなか男性だけで観るのはなかなか勇気のいることだろうと思うので、全国の男性諸君はだれか女性をさそっていってください。映画としても、男性性と女性性についての映画であることは明白であり、また、女性は社会のなかでいかにして仕事と家庭を両立できるのか? という2015年においてかなりホットなテーマを扱っている。そのミューズとしてのアン・ハサウェイは、ファッションのベンチャーの社長とし…

雑記 ( September, 2015 )

雑記 ( September, 2015 )

  九月のある日、僕は福岡市にある銭湯のサウナで、テレビのニュースが流すルポルタージュに釘付けになっていた。延々とつづく水害の被災地の映像。激しい水に呑まれ、車が、家が流されてゆく光景に、4年半前のあのときの光景がオーバーラップしはじめ、僕のもとに眩暈のようなものが襲ってくる。家が流されてしまったというひとりの老人が、取材にきた記者の質問に淡々と答えている。「自然の力だからね、仕方ないよ」。毎日の生活の基盤たる家が流され、丁寧に手をかけつづけてきた田んぼが荒され、見慣れた町の光景が消えてなくなる。彼がつみかさねてきた暮らしというものが、一瞬にして壊されてしまったのに、彼の口から出たこ…

ドストエフスキー『罪と罰』――みずからの〈生〉を肯定するために〈罪〉を引き受けるということ
  • 2015/10/11

ドストエフスキー『罪と罰』――みずからの〈生〉を肯定するために〈罪〉を引き受けるということ

”《もうたくさんだ!》彼はきっぱりとおごそかに言った。《幻影、仮想の恐怖、妄想よ、さらばだ!……生命がある! おれはいま生きていなかったろうか? おれの生命はあの老婆とともに死にはしなかったのだ! 老婆の霊に冥福あれ――それで十分だ。(…)《おれはもう二本の足がやっとの空間に生きる決意をしたのだ!》” 5年ぶりくらいにドストエフスキー『罪と罰』(工藤精一郎訳, 新潮文庫)をふたたび手に取った。『罪と罰』は、わたしがはじめて読んだドストエフスキーの作品でもある。5年前にはじめて読んだときから比べると、だいぶ読みかたが変わったように思える。もちろん、読みがある程度深くなった部分もあるのだろうけれど…

雑記( August, 2015 )

雑記( August, 2015 )

二年ぶりに東京で迎えた夏は、早くも終りつつある。すでに秋の風が吹いている(どちらかというと台風の風というほうがふさわしいかもしれない)。八月の頭の連日のうだるような暑さにはほんとうに辟易とし、そのなかをゆくリクルートスーツに身を包んだ就活生を見るたびに戦慄していたのだが、いざその夏が終わりかけてみるとやはりどこかに一抹の寂寥が残る。先日の呑みの席で先輩から「春夏秋冬のうち、夏だけが終わる」と言われて膝を叩きまくったのだが、はたして夏というのはいったい何なのだろうか。考えてみると、ほかの季節に比べても、夏を代理表象するかのようなものごとはこの世にあふれている。花火、浴衣、海、プール、BBQ……あ…

奈義町現代美術館、快と不快のあいだで

奈義町現代美術館、快と不快のあいだで

何気なく雑誌のページをぱらぱらと繰っていたら、岡山県奈義町に現代美術館があるということを知った。奈義町は、毎夏帰省している田舎から車を10分も走らせれば着いてしまうちいさな隣町で、親戚も住んでいるため何度か訪れたことがある(国道53号線!)。それにもかかわらず、そのページにたまたま目を落とすまでは、そんな近場に高名な現代美術館があるとは思いも寄らなかったのだ。灯台下暗しというやつである。 今夏もちょうどいま2年ぶりに帰省しているので、母と親戚の挨拶がてら現代美術館をめざし奈義町へ向かった。奈義町には自衛隊の日本原駐屯地があり、道程、大きな駐屯地の門構えのむこうに空軍のヘリコプターが見えて少々興…

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