世界に対して、可能性は常にひらかれている − 三宅唱『無言日記/201466』

世界に対して、可能性は常にひらかれている − 三宅唱『無言日記/201466』

三宅唱が2014年、1年かけて日々iPhoneのカメラで彼の日常を撮り収めて66分にまとめた映像作品『無言日記/201466』をユーロライブで観た。上映後には、三宅唱と菊地凛子のトークショーが併催。ちなみに、ぼくは2年ほど前に三宅唱『Playback』を観てとたんに恋に落ちたのだが、もうじきHIPHOPが生まれる瞬間を収めた新作である『THE COCKPIT ザ・コクピット』が公開される。どうやらその公開に合わせたイベントだったらしい(『THE COCKPIT』はほんとうに楽しみだ!)。 ♢ へんな話だが、『無言日記/201466』を観て、わたしははじめてよくわかっていなかった量子力学の可能性…

記録 ( April, 2015 )

記録 ( April, 2015 )

4月。フランス、ブルキナファソと経て、ひさしぶりに日本に帰ってきた。また東京というこの地でふたたび日常を取り戻さなければいけない。なんだかすこし憂鬱な気分が混ざりつつ、それをもみ消そうかとするように芸術作品に触れたりする。阪神タイガースの試合を観戦するほうが大抵の場合たのしいのだが、いかんせん阪神は不調なのでにっちもさっちもいかない。いつ飽きるか不明だけれど(もしかするとこの一回きりかもしれないが)、飽きるまでは毎月ふれた作品を記録してみようかと思う。Tumblrでは2013年9月から記録をつけ続けているのだが、蓄積されたデータを見返すだけでハッピーになれる。ぼくはわりかしこういうことに充足感…

いま、ふたたび〈変身〉し目醒めるグレゴール・ザムザ(たち)

いま、ふたたび〈変身〉し目醒めるグレゴール・ザムザ(たち)

平田オリザ作・演出『変身 アンドロイド版』早稲田小劇場どらま館のこけら落とし公演を観劇の後、つづけて「すばる」5月号に収録されている多和田葉子の新訳『変身(かわりみ)』を読んだ。いま、ふたたび寝台で〈変身〉して目醒めるグレゴール・ザムザ(たち)。 — 井上 および 旅行用バッグ (@ry_i) 11 Mai 2015 わたしが『変身』をはじめて読んだのは、高校2年生のときだったと記憶している。それからいちど大学に入ってから再読した。たしかどちらも新潮文庫だった気がするので、おそらく訳者は高橋義孝だろう。調べてみると、どうやらすでにすくなくとも9つもの『変身』の邦訳が世に送り出されて…

フランツ・カフカ『審判』、あるいは夢のなかで突き立てられるナイフ
  • 2015/04/12

フランツ・カフカ『審判』、あるいは夢のなかで突き立てられるナイフ

ある朝、主人公のヨーゼフ・Kがとつぜん逮捕されるところから物語がはじまる。なんだって冒頭の文章がこの通りなのだ。 “だれかがヨーゼフ・Kを中傷したにちがいなかった。悪いことはなにもしなかったにもかかわらず、ある朝彼は逮捕されたからである。” 朝眼が醒めてベッドでまどろんでいると、突然見知らぬ男たちが彼の自宅にずかずかと入ってくる。横柄な態度をとりながら、「きみは逮捕された」と高らかに宣告してみせるが、ヨーゼフ・Kがなぜ逮捕されたのかと問い詰めても適当にはぐらかされ、やがて「なぜかは知らないが、ただわたしはきみを逮捕するという上からの命令に従っているだけだ」と白状する。比…

1年間の海外留学を終えて——フランスで諸諸と出合ったことについて

1年間の海外留学を終えて——フランスで諸諸と出合ったことについて

かつての僕はなにを思っていただろうと思いを巡らすとき、ブログというメディアがあるのは非常に便利だ。日記もつけているので、もちろんそちらも参照することは多々あるのだが、ブログの記事という形である程度まとまった思考にいつでも立ち返ることができるのは間違いなくブログのひとつのすぐれた点と言っていいだろう。読み返しながらその内容に恥ずかしくなって死にたくなることがほとんどだが(ほんの一日前に投稿したそれに対してもしばしば起こる)、たまにだけれど意外といいこと書いているじゃないかと自身で驚くこともある。そういう思考の軌跡がひとつの人目に曝されている場所にログとして残っていってしまうというのは残酷な話では…

ブルキナ日記 #03|月明かりに照らされて

ブルキナ日記 #03|月明かりに照らされて

いつものキオスクで、たわいもない話をしていると、急に停電が起こった。べつに珍しいことではない。停電なんてもはや日常茶飯事だ。いつもと同じように、街灯や建物の電灯たちはほんのすこしの間隔を空けながら次々と消えてゆく。僕たちは口々に「ああ、またか」と呟く。 少しして街じゅうが暗くなったであろうと思われたころ、僕は背中のほうから青白い光が差していることに気づいて、思わず振り返った。ひとつだけ電灯の光が停電を免れたのか、まさかそんなはずはという思考が一瞬頭をよぎるも、すぐにそれが間違っていたことを発見する。 満月だった。すこしも欠けていない真ん丸の満月が、燦々と照っている。月の光はこれほどまで明るいも…

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