MY 10 BEST MOVIES OF 2014

MY 10 BEST MOVIES OF 2014

かつては年間ベストなんてものを悠々と公開するなぞそんな恥ずかしいことはないと思っていたが、いざやってみると楽しくて仕方がなかった。どういう観点で順位をつけるかによって結果がまったく変ってくるので暫くどうするべきか困っていたのだが、「映画体験」としての価値ということを軸に考えておいてみた。なぜお金を払ってまで映画館へと足を運んで、スクリーンで映画を観るのか。その問いに答えてくれるような映画を選んだつもりである。というわけで、2014年にスクリーンで鑑賞した新作映画ベスト10と旧作映画ベスト5。 なお、9月末から滞在しているブルキナファソという小国は世界の映画産業とほとんど切り離されているために、…

カフカの〈リアリティ〉に酩酊する(あるいは保坂和志『小説の自由』について)
  • 2014/11/23

カフカの〈リアリティ〉に酩酊する(あるいは保坂和志『小説の自由』について)

机のうえに、一塊の大きなパンがあった。父がナイフをもってきて、それを半分に切ろうとした。ところが、ナイフはしっかりしていてよく切れるし、またパンは柔らかすぎも固すぎもしないのに、ナイフの刃がどうしても通らない。ぼくたち子供はびっくりして、父を見あげた。父はこう言った。「おまえたち、なぜ驚くのだね。なにかが成功するほうが、成功しないより、ずっと不思議なことではないのかね。さあ、もうおやすみ。たぶん、なんとかうまくやれると思うから」  ぼくたちは寝床に入った。しかし、ときおり、夜幾度もまちまちの時刻に、ぼくたちのだれかがベッドのなかで起きなおり、首を伸ばして、父を見た。背の高い父が、いつもの長い上…

ブルキナ日記 #02|チョコレート・アンド・コーヒー・アンド・シガレッツ

ブルキナ日記 #02|チョコレート・アンド・コーヒー・アンド・シガレッツ

3枚入りの板チョコを買った。近所にあるちいさな商店で冷蔵庫のなかに見窄らしく隅に追いやられているチョコレートの包みを視界の端に捉えて、そういえばチョコレートなんて贅沢品をこの国に来てからまだ一度も口にしていないなと半ば衝動で手に取った。レジに持っていくとテレビから目を離そうとしない店員に1000フラン(およそ200円)と怠そうに言われて一瞬購入を躊躇うが、そのまま衝動に身を任せて買ってしまった。日本でも板チョコ3枚って同等の200円くらいで買えてしまうよなあと、ずっと長い間放置されていただろう薄汚れたパッケージに納得する。たとえばブルキナファソの隣国のガーナは日本でも「ガーナチョコレート」の名…

美を欲望するということ。Marguerite Kelsey、5月、倫敦

美を欲望するということ。Marguerite Kelsey、5月、倫敦

「この絵を僕のものにしたい」とはじめて切望したのは、ロンドンのテート・モダンでMeredith Framptonによる“Marguerite Kelsey” (1928)のポートレイトを目にしたときだった。閉館まであまり時間がない中、美術館の膨大なコレクションをなるたけ多く目にしてやろうという魂胆でわりかし急ぎ足で館内を回っていたのだが、この絵を視た瞬間に足が止まった。それからしばらく、この絵から——あるいは、この絵に描かれたMarguerite Kelseyから——目が離せなくなってしまったのである。 いまでもこの絵をこうして見るたびに美しいと思わずため息を吐いてしまうのだが、なぜとりわけこ…

(一般人のための)カンヌ映画祭サバイバルマニュアル

(一般人のための)カンヌ映画祭サバイバルマニュアル

67回カンヌ国際映画祭、一般人だけれどフラリと行ってきた。せっかくカンヌのちかくに住んでいるので、世界一の映画祭に行かないわけがないと思っていたものの、直前まであまり調べずにいたところ「果たして(お金のない)一般人でも参加可能なのかしら」「招待されるようなニンゲンじゃないとまったく映画見れないんじゃないの」という疑問も渦巻く次第。というか、そう思っているひとがフランス人でも非常に多い。 結論から言えば、”Oui et Non” (Yes and No)。詳しいカンヌ映画祭の説明に関しては、丁寧に説明している記事(『カンヌ国際映画祭開幕。「カンヌ」とはいったい何なのか』)…

雨が降り頻る八月のパリで

雨が降り頻る八月のパリで

これほど雨が降り続けていた8月のパリも珍しいのではないかと思う。多くのパリジャンはバカンスに旅立ち、代わりに観光客で溢れかえっている。不幸ながらにして残ることになったパリジャンは、その寒さのあまり秋冬用のコートを押し入れの奥から取り出して、嬉々としてパリを訪れている観光客たちも同様にブティックでセーターなどを買っているようだ。そんな8月のパリに、僕は観光客としてでもなく、かといってパリジャンでもなく、ほんのつかの間の滞在者としてフランス生活最後の1ヶ月を締めくろうとしていた。 とくになにもしなかった1ヶ月だった。凱旋門にもエッフェル塔にもモンパルナスタワーにも登っていないし、ノードルダム大聖堂…

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